六波羅蜜

【ろくはらみつ ろっぱらみつ】

菩薩ぼさつ仏道ぶつどう修行しゅぎょうの到達点である「智慧ちえ」を得るために修行する方法を六つにまとめたもの。波羅はらみつは、梵語ぼんごパーラミッタの音訳おんやくであり、みっとも訳される。パーラミッタは「完成されたもの」、「最高のもの」などの意味をもつ。中国において漢訳かんやく意訳いやく)されたさいに、「迷いの世界(がん)からさとりの世界(彼岸ひがん)へ到る」という意味が付され、「とう彼岸ひがん」「」とも訳されるようになった。そのために「六度」と訳されることもある。

六波羅蜜は以下の六つの徳目からなる。

布施ふせみつ
持戒じかいみつ
忍辱にんにくみつ
精進しょうじんみつ
禅定ぜんじょうみつ
智慧ちえみつ般若はんにゃみつ

①~⑤の各徳目は、智慧波羅蜜(完成された最高の智慧)を得ることを目的として修行する。つまり、ひとつひとつの徳目とくもくが独立しているのではなく、「智慧波羅蜜」に向かって相互に関連付けながら修行していく。

龍樹りゅうじゅ(150~250頃)はその関連性を『ほうぎょうおう正論しょうろん』において、布施波羅蜜と持戒波羅蜜が利他りた、忍辱波羅蜜と精進波羅蜜が自利じり、禅定波羅蜜と智慧波羅蜜が解脱げだつに分類されるとしている。また、布施波羅蜜、持戒波羅蜜、忍辱波羅蜜が「かい」、禅定波羅蜜が「じょう」、智慧波羅蜜が「」の三学に相応するとし、精進波羅蜜はどの徳目にも必要な心構えとした。

龍樹による分類
利他 布施波羅蜜
持戒波羅蜜
自利 忍辱波羅蜜
精進波羅蜜 どの徳目にも必要
解脱 禅定波羅蜜
智慧波羅蜜

参考文献

[1] 『浄土真宗辞典』(浄土真宗本願寺派総合研究所 本願寺出版社 2014年)
[2] 『明治学院大学教養教育センター紀要 : カルチュール四巻』「ナーガールジュナ(龍樹)の実践的仏教理解・試論 :チベットに伝えられた伝統から」(吉村均 明治学院大学 2010年)

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